●9話
・・第一章・・
次の朝、目が覚めた美咲を待っていたのは、『9』に減っているカウントの数字だった。
一気に目が覚めて、がく然となる。
変わっている数字が信じられない。間違いではないかと思った。
目をしばたき、何度も目を閉じ、意識を沈め、虚空を浮かぶ数字を見直しても、その数字は変わらない。
ガックリする。
『浮かぶ数字』については、美咲自身よくわからない現象だったのだが、どうやらカウントダウンの意味を持つのは、間違いないかもしれない。
(でも、なぜ今になって減りだしたんだろう・・・。)
頭を抱えて考えてみても、さっぱり見当がつかない。
ただ2,3か月を目安に、減ってゆくものだったのかもしれないし、美咲にも気づかない間に、カウントを下げる何かの行為をしてしまったのかもしれない。
0になった時に、美咲には何が待ち受けているのか・・・・。
(やっぱり私には、残された時間があまりないって考えといた方がいいんだわ。)
なにもかも推測で、物事を考えなければいけない状況は、納得できるものではなかった。けれど、すべては美咲が約束の一つを破ってしまった後に起きた現象なので、文句の言い様がない。
(・・・・やっぱり甘くはないわよね・・。)
がっくりきてうずくまったまま、美咲がベットの上で動けないでいると、
「・・・そろそろ起きないと、まずいぞ。」
声がかかって、カーテンがサーと惹かれた。
分厚い布が取り除かれたせいで、一気に室内が明るくなる。
竹林だった。彼はすでに着替えをすませていた。
ハッとなって彼を見上げた美咲は、ついしげしげを竹林の様子を見てしまう。
華奢な体付きながら、程よく筋肉がつき、引き締まった体を覆う竹林の制服姿は、新鮮だ。なぜだか美咲をドギマギさせる。
彼は美咲の視線に気づいて、あわてて視線を外した。
「あーぁ。締めていると苦しい・・。」
なんて、独り言をいって、きちんと締めたネクタイに手をやって、緩めようとした。
が、一瞬後、ネクタイから手を離す。そして、チラリと美咲に目をやって、
「・・・早く用意しないと、遅刻するぞ。」
と、声をかけるとサッサッと部屋から出て行ってしまうのである。
(!!!!そうだった!)
今日は、入学式なのだ。
カウントダウンの減少は、ショックだったが、落ち込んでうずくまっているわけにはいかない。
あわててベットから降りて、パジャマを脱ぎすてて、美咲も昨日のうちに用意してハンガーにかけてあった制服を着こんでゆくのだった。
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