●49話

 ・・第二章・・


「お前の気持ちも分からないでもないが・・・あれは一旦怒ると長いんだ。あぁ、家に帰りたくなくなってきた・・。」
「とりあえず俺の部屋に来るか?終電に間に合うように帰れば、なんとかなるだろう。」
 青木の提案に、篠山は少し逡巡するも首をふって、
「いや、帰りは志乃の首を引っ張っても、一緒に帰るつもりだ。」
 万が一、他の香徳の奴にとっつかまったら取り返しがつかない。
 ブツブツつぶやく篠山の、志乃に対するご執心や、すごいものがある。美咲は感心するものを感じた。
「志乃さんは、そんな軽い人じゃないと思うよ。信じてあげなよ。」
 さりげなくコメントすると、彼は泣き笑いのような表情をうかべ
「あいつはまだ俺のものじゃないんだ。万が一でも、他の奴に盗られるきっかけを、なるたけ作らないほうがいいと思うんだよ。」
 その点、お前等はいいよな。
 羨む気持ち一杯の篠山に見つめられて、美咲はなんとも言いようがない気持ちになった。
 美咲は、竹林の側にいれる時間が、それほどないのだから・・。
(私こそ、あなた達が、羨ましい・・・。)
 篠山と志乃はまだまだお互いに、素直になれない所はあっても、はたで見ている限りはいい感じだ。
将来を約束されている二人には、未来がある・・・。



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