●46話
・・第二章・・
それからの鉄の見学は、ほとんど見学できなかった。といってよかった。
すっかり気持ちが沈んでしまった美咲は、列にただ付いてゆくだけになってしまう。
ほどなくして昼の休憩の時間になったのが、救いだっただろうか。
屋上の一スペースが用意されていて、生徒達は、思い思いの場所でシートを広げて食べてゆく。
女子の持ってきた弁当をほおばれる贅沢な輩もいたが、竹林達と合流した美咲は、各自で用意したコンビニ弁当やら、おにぎりを出して食べた。
一緒に食べたメンバーは、竹林と青木と美咲。それと篠山の許嫁の志乃と、彼女の友達だという寺崎アオイと、秋月菜穂が同席していた。
聖華女学院の制服は、今も昔もセーラー服らしいとの事。
セーラー服姿の志乃は、着物姿の志乃と、どこか雰囲気が違って見えた。
規則通りの膝まであるスカートと、体に合わない大きめの服を着用しているためか、彼女らしい魅力が半減されて見える。
野暮ったく見えるくらいの志乃の姿をみて、ちょっと残念に思ったのは、なぜだろうか。けれども、偶然にも、三人とも話す機会のあった美咲は、また彼女達と話が出来ると思うと、少し嬉しかった。
そして、竹林の横には、例の美少女はいない。
竹林は、昼の休憩に入った時、一目散に美咲の側に来てくれたのだ。
気持ちのこもった瞳を向けられて、不安に思っていた気持ちは、一瞬にして消え去った。
その事が、何より一番、嬉しかった美咲だった。
聖華女学院とは、定期的にイベントが行われているせいで、美咲以外はみんな顔見知りで、食事風景は和やかだ。
自分で用意したコンビニのおにぎりを食べた後は、家からの差し入れ・・と、篠山が広げたお重の弁当までつつけたので、これ以上ないくらいに、お腹が一杯になる。
初夏の陽気に屋上は、ちょうどいい感じに暖められていて、横に座る竹林の肩にチョコンと頭を傾け、空を見上げれば、雲ひとつない。
限りなく青かった。
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