●4話

 ・・第一章・・



 ・・・・風呂は高校生にもなると、外の銭湯に入るのもよし、寮の中にも内湯やシャワーがあるので、そこですますのも可能だ。
 皮肉にも、親切に説明してくれる竹林によって、ちょっとした、けれどもかなり有用な情報を得ることができたのだった。
 竹林は、元々付属の小学校から中学へ。そしてこの高校に上がってきたらしい。
 実家が県外にあるので、さすがに低学年のうちは、送り迎えをしてもらっていたらしい。小学校の高学年にもなると、寮に住んだという。
 そのせいか、どの学校にでもある校風のようなものを、彼から感じ取ることができた。
 はじめに妙な行動をとられて怒り心頭だった美咲なのだが、結構押しの強い彼のペースに結局は、はまってしまう。
 なぜなら、寮に入ったとしても、夕飯の時間から、場所すべての説明を受けていなかったから、中の段取りが全然わからなかったのだ。
「そろそろ夕飯だよ。時間内に食べないと、お預け食らうよ。」
 と、ふいに声をかけてこられて、美咲は荷物の整理を中断した。
「うん。」
 と、彼についてゆかざるを得ない。
 食後も、
「お風呂はどうする?」
 と、聞いてこられて、お風呂の場所さえ知らないのに、その時気づく。
「入りたい。」
 と、返事せざるをえない。
「今日は銭湯にしよう。」
 と、言う彼と、寮についた当日は、自然に行動を共にすることになったのだった。


 銭湯に着き、脱衣所で服を脱いだ竹林は、意外に筋肉質な体付きをしている。美咲はドキドキした。
(中味は女の子なんだもの・・・。これって想定外だったわ・・・)
 とにかく同性(美咲はだ)の女の子たちの姿を目にしたくなくて、男子校を選んだのはいいが、個室のバスルームがないくらいは、考えておくべきだった。
 関係ないが、竹林以外にも、ここの生徒らしい男子がたくさんいる。
 みな結構いい体格で、竹林などは細いすぎるくらいだ。
 竹林の体を、筋肉質な体つき。と思ってしまうくらい”河田凉”の体型は、痩せすぎていた。
 というより、全体の筋肉量が、普通の男性とは少し違うのかもしれない。
 痩せていても、骨が浮き出ることはなく、まんべんなく肉が付いているこの体は、男性らしくなかった。
 今までこれが当たり前の男の体だと思っていたが、初めて他の男たちの裸を目の当たりにして、その違いに愕然となったのである。
 理由の一つに、車椅子生活があったのかもしれない。
 それとも、凉の体を動かしているのが、女性の魂だからか・・・。
 よくはわからないなりにも、慌てて彼らと同じように筋肉をつけようとは思えないのも事実。
 一方、
(私・・・ここでも中途半端だわ・・。)
 美咲は妙な劣等感を感じるのだった。
「俺からなるたけ離れずにいろよ。」
 なぜだか、眉をひそめて脱力した感じで竹林が言ってきて、
「・・う・・うん。」
 と、答えると、彼はさっさと浴場に入ってゆく。
 慌てて美咲は後を追うのだった。




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