●28話
・・第二章・・
「・・・・・。」
美咲はすぐに返す言葉が見つからない。
カレハイマナニヲイッテイル・・・。
美咲の固まってしまった表情に、首をかしげた竹林は
「・・・・急にそんな事言われて、訳わかんないか。・・・けれど奴の能力は本物なんだ。奴には、見えない世界が見える。」
と、言葉を紡ぐ。
「河田・・・本当のお前は、河田凉じゃないんだろう?ちゃんと、見えてる奴がいるんだ。
名前を教えてもらえないか?本当の名前を・・・。」
単刀直入な質問。
まどろっこしくないだけ、美咲の心の中に、ダイレクトに入ってきた。
(見えた?凉の体に入り込んでいる私の姿が・・・?)
あり得ない現象であるがゆえに、見事に言い当てられた時の文言を、用意していなかった。
けれど、初めて会った時はともかく、今まで青木が謎めいた質問をしてきて、美咲をひどく戸惑わせた理由が、これで分かった。
(青木には、見えていたんだ・・・。)
「竹林も、見えるの?」
動揺して、か細く質問する美咲に、竹林はこれ以上ないくらいに、優しい笑みを浮かべて首を振る。
「あいにく俺にはそんな能力、これぽっちもないが、お前の人柄くらいは読み取れる。
教えてくれないか?・・・野郎の体に入ってしまったのには、訳があるんだろ?」
竹林の一言一言は、ひたむきで、優しい響きを伴った。
気がつくと、美咲は口を開けて彼に話していた。
河田凉の体に入ってしまった事情を・・・。
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