●27話

 ・・第二章・・



 パッチワークの布を張り合わせているうちに、ウトウトしていて、いつの間にか眠ってしまったらしい。
 それでも針は何気に、針山に突き刺さっている所が、美咲らしい所だ。
 ふいにドアが開いてハッとなり、振り返ると竹林だった。
「・・・あぁ。お帰り。今日はクラブはないの?」
 目をパチパチやって問いかける美咲に、
「今日は休むって言ってきた。」
 と、短い返事。カバンを机の上にドサッと置くと、竹林は美咲の顔をジッと見てくる。
「・・どうしたの?」
 あまりに真剣に見てくるものだから、戸惑って問いかける美咲に、彼は小さな息を吐いた。
 イスを持ってザザァーと、コマを動かして美咲のすぐそばまで移動させると、座る。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど・・・いいか?」
 と、聞いてくる彼の表情は、あくまで深刻だ。
「・・いいけど・・。」
 答えると、竹林はコクン。とうなずく。
 竹林自身、気が付いていないだろう。
 この頷くしぐさがそうだ。
 入学してから、ともに暮らすような環境の中で、時々見せられる彼の表情。
 ピンと張りつめた緊張感を持って過ごす竹林は、見かけに違わず男らしい気性を持つ。そんな彼が、たまにこの様な、あどけない仕草を見せるのだ。
 美咲がドキドキしているなんて、思いもしないだろう。
(ここに来たおかげで、こーたろーの事は、あまり思い出さないようになったのに・・・今度は、同室の竹林にときめく私って・・・。)
 そんな自分に、自己嫌悪しているなんて、竹林は露ほど感じていないはずだった。
「・・・入学式の時に、青木が卒倒して倒れた時のこと、覚えているか?」
 真剣な表情で質問してきた内容は、そのことだった。
「もちろん。覚えているよ。」
 即座に答える美咲に、
「・・・実は、青木には見えないものを、感じる能力を持っていて、奴は、河田の中に潜む女の子の存在が、見えたらしいんだよ。
 いきなり見えたものだから、ひっくり返ってしまった。」



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