●26話

 ・・第二章・・

 
「あっ、そろそろ帰らないと・・今日は新規の生徒さんが顔を出す日だったんだ。」
 今気付いたにしては、調子が良すぎる言い訳をして、篠山がソサクサと、席をたつ。
「俺も・・・ちょっと買出し行くんだった・・・。」
 青木までも、さっさと席をはずしてしまう。ポツン、と一人残った形になった竹林は、眉をひそめ、
「なんなんだ?あいつら・・。」
 言いながらも、思う所があるようで、椅子をクルクル回しながら、物思いに沈みだす。
(河田は、河田のままでいいじゃないか
 ・・・・けれど、青木達が謎に思うのも、無理ないかもな・・・。)
 ハァー。とため息をついて、ガックリとうなだれる。
 少し紫がかった瞳を宙に向け、
「いっそのこと、河田本人に聞いてみようか。」
 と呟いて、ハッとなる。
「・・・・そうなんだ・・。コソコソするから妙な具合になるんだ。直接事情を聞けばいいんだ。
 正面切って聞けば、あいつなりの返答が、返ってくるはず。」
 そう思うと、いてもたってもいられない。
 元生徒会室に姿を現さない河田は、今頃寮に戻っているはずだった。
 たいして外に出ない彼?彼女?の日常は、共に過ごしている(寮の中で)竹林にしてみれば、だいたい見当はつくのだ。
 勢いつけて、元生徒会室を最後に出てゆく竹林は、当たり前のように戸締りをしない。
 けれども、彼が出て行った後に、教室の鍵が、ひとりでに閉じてしまう現場を知る者は誰もいなかった。
 室内を、ユラリとある部分の景色が揺らいでいることも・・・。



  HOME   BACK  NEXT