●23話

 ・・第二章・・

 
 学校に少し慣れたかなと思う頃、大型スーパーが入り込むショップに、一人足を運んだ時、本格的な手芸や、手作りアクセサリーのパーツを、販売する店を見つけた。
 毛糸の玉は言うに及ばず、ニットの玉や、パッチワークの素材。ペンフトゥーワインの糸。シルバーアクセサリーの材料。見本のぬいぐるみが並べられ、そのまま編めばできるセット物などが、置いてある。
 思わす、時間を忘れて見つめていた。
 次の日も、足を運んでみると、なんと篠山の姿があったのだ。
 女性ばかりの客の中で、背の高い男性の存在はとても目立った。
「篠山!」
 声をかけると、彼もちょっとびっくりした顔を返してくる。
 両手一杯に布地や、糸が握られていた。
「河田もやるの?手芸。」
 まるで貴重な同類を見つけたかのように、瞳を輝かせて言ってくる篠山に、美咲も
「・・・うん。たいして上手くないけどね。」
 と答えると、彼はウンウンとうなづいた。
「上手い下手は関係ないよ。・・・で、河田はなにをするの?」
 両手を左右に広げて聞いてくるので、美咲は少し首をかしげ、
「僕は・・パッチワークと、へンプくらいかなあ。」
「パッチワークなら俺もするよ。へンプも簡単にできるしね。」
 彼も手作りアートを趣味にしていたのだ。
 瞳をキラキラさせて言ってくる篠山に、美咲も嬉しくなって
「本当?よかったら品物を見せてよ。」
 勢い込んで言った言葉が現実になった。
 篠山とショップで出会ったのが休日だったおかげで、その一時間後には、彼の家に向かって電車に揺られていたのである。
「河田の家って凄いんだろ?それに比べて俺ん家は、大した家じゃないから、恥かしいよ。」
 いつの間に河田榛の実家を聞き及んでいたのか、そんな台詞をはいてくる。
 言っている割には、篠山の瞳は愉快気だ。


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