●20話

 ・・第一章・・

 篠山と二人でテキパキをいらないものは一固めにするか、ゴミ袋へ。
 箒でほこりを払い、ぞうきんでそこいら中をふき、少し汗をかいたくらいな感じになった所で、
「おぉー。きれいになってるジャン。・・・河田ありがとう。篠山。お前どうしたんだよ。」
 と、部屋に入ってきた青木が、瞳をまん丸にして、驚きの声をかけてくる。
「お前等、ありがたく思え。
 春休み以来、こっちには寄らなかったから、誇りがたまっていただろう?
 河田と二人で掃除してやったんだからな。」
 篠山が汗を拭きながら答えると、青木はコクンとうなずき、チラリと周囲を見回し、満足げにうなずくと、
「そりゃ、サンキューだ。悪かったな。」
 言って定位置にあるソファに腰掛けた。
 元生徒会室だったここは、テーブルやイス。戸棚など、一通りのものがそろっていた。
 さすがにガスは止められていたが、水道は使えるので、調理用の小さなテーブルにはカセットコンロが置いてある。
 やかんやナベまでが置いてあって、ちょっとした煮炊きや、飲み物が用意できるようになっていた。
 さすがに、そこだけは最低限の片づけはしていあったので、ちょっと関心。
 青木が座ったソファは古い物だが、造りがしっかりしているらしく、十分に使えるものだ。
 職員室から持ち込んだかのような、教員用の回転イスには、青木の後から入ってきた竹林が座る。
「竹林。練習は今日からか?」
 篠山が声をかけると、
「え?あぁ・・そうだ。夕方からだ。」
 短く答える竹林の雰囲気が、またさっきと違っている。
 教室では、やたら機嫌が良かったように思えた彼は、今度は終始ダンマリな感じだ。
 青木と話して、何かあったのだろうか?
 気がかりそうな美咲の様子に気づいたようで、チラッと見返してくるものの、すぐに外してしまう。
(なにがあったんだろう・・。)
 思うものの、事情が分からない美咲には、推測しようがない。
(変なの・・。)
 と、心の中でつぶやくしかなかった。
「高校の数学Aの山口って先生。教え方最悪らしいぜ。」
「うそだろ?俺、ただでさえ苦手なんだぜ。いい加減、塾考えようかなあ。」
「俺が教えてやるよ、、まあ俺がまず理解できればだがな。」
 と、軽口を言い合う青木と篠山の二人の会話には、美咲は入ってゆけなかったのだった。



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