●12話
・・第一章・・
保健室で、横になった青木は一息つくと顔色もマシになる。
それを確認した竹林が、入学式に出席すべく退出しようとすると、彼は
「行かないでくれ〜。」
と情けない言葉をかけてくる。
保健の先生からも、青木の鬼気迫る様子に
「入学式だけれど、もう少しいてあげれる?」
と、言葉が出たくらいだった。
仕方なく青木のベットのそばに腰掛けた竹林に、青木が問いかけてきた。
「お前と同室の河田凉って子。・・・おかしい所なかったか?」
と、おどろおどろしい表情で、言ってくるのに笑ってしまう。
おかしいのは竹林自身の方だ。
「別に・・・ただ、この学校を選んだのは、間違ったタイプだとおもうな。
・・・・妙な奴らに目を付けられなければいいと、俺は思う。」
言ってからもう一言、言って行ってみたくなる。
「そのうちお前も実感できるぞ。
まるで、女子といる気分にさせてくれるからな。」
竹林の言葉に、再び血の気が引いたように、青木は顔を青ざめさせた。
「・・・もう見えてるよ。俺には、もう一人の姿がはっきりね。
どうゆうことなのかはわからないけど。さっきあの子を目にした時、女の子の姿がブレて見えたんだ。
俺のもう一つの目がね・・起動したようだ・・。」
言いながら、さっきの光景を思い出したのだろう。
首を振って、ため息をついた彼の表情は青いのをこえて、蒼白だ。
この優しい心持ちの少年は幸か不幸か、見えない世界が見える才能を持ってしまっていた。
とはいっても、見える事を他人に披露したり、人とは違う能力を持ったことで、理由のない優越感に浸ったりはしない。
逆にひっそりと過ごしていたくらいだった。
それもつい2,3か月くらい前に、とても嫌な体験をしたことがあったのだった。
そのおかげで、霊媒体質を麻痺させる術を、かけてもらった経歴まであった。
最近彼の状態は、落ち着いているようにおもえたのだが・・。
「・・・全然見えなかったのに・・。」
肩を落としてつぶやく青木の言葉を聞いて、竹林は気のせいではなかったのだと思う。
そして、何気に聞いていたさっきの青木の言葉に、今さらハッとなる。
「お前今、女の子の姿がブレて見えたって言ったよな。・・・どうゆう事だよ。」
彼の肩をつかんでたたみかけて怒鳴る竹林に、青木はポカンとした顔をする。
「どうゆう事って、そのとおりだよ、あの子には、別の人格がとり憑いている。
・・・・元の人格が、表に現れないくらいにね。
なんだかとても恐ろしかった。二度とは会いたくない人だけど、お前と同室だって言ったね。」
ご愁傷様・・なんて、心配げな顔をして、言われてもどうしようもない。
「・・・恐ろしくって・・けれど、今思えば不思議な感じだ。
だいたいは、完全にとり憑いた場合でも、元の人格が見えなくなるってことはないんだ。
まるで別人があの子を動かしているような・・・。」
「その別人って、女の子なんだろ?」
青木の能力は、嘘ものではない。
そんな事、過去にイヤ程思い知らされたのだ。
確認するかのように言う竹林に、青木はコクンとうなずく。
「・・どんな子だった?」
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